イスラエルいろいろ

イスラエルってどんなところ? ふだんだれがなにして暮らしてる? そんなギモンを掘り下げてみました。ユダヤ人の歴史・文化にも踏み込んでいきます。

Q&A ユヴァル・ノア・ハラリ 「ゲイであることについて」

イスラエルはLGBTや女性の権利に積極的に取り組む国として知られています。

6月にアジアで二番目に大きいLGBTパレ―ドがテルアビブで開催されました。

 

それに先立ち、『サピエンス全史』の著者であるヘブライ大学で教鞭をとるユヴァル・ノア・ハラリ氏が自身がゲイであるということについてインタビューを受けていました。

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以下はその翻訳になります。

 

 

Q:あなたがゲイであるという事実は、自身の科学研究に影響を与えていますか?

 

A:「すごく与えています。ゲイの男性として、人間によって発明された物語と現実の違いを知ることはとても重要です。科学的研究にもその能力は欠かせません。幼い頃、男の子は女の子に魅かれるものだと言われ、それを信じていました。それが人間によって作り出された物語だとわかるまで、とても時間がかかりましたし、男の子が男の子を好きになることがあるという現実、自分が偶然その一人であると気づくまで、長い時間がかかりました。多くの人々が信じる物語と矛盾していても、現実をそのまま受け取るということは偉大な知恵です。」

 

A:「それに、多くの人が男性同士が愛し合うとと、天にいる「偉大な者」がひどく怒ると言いますが、それもまた人間が作りだした別の想像の物語でしかありません。二人の男性が愛し合い、誰も傷つけなければ、問題があるとは思えません。天にいる「偉大な者」も怒りはしません。怒るとしたら司祭やラビたちなのです。」

 

A:「科学的研究もまさに同じ中傷に基づいています。科学者としてわたしは頻繁に自分に問いかけています。何が現実なのか。世界について人間が作りだしたあらゆる物語は忘れよう。世界の真実とは何なのか。ゲイの男性として、現実が人々の語る物語と衝突したら、現実を信じることが最良の道だと学びました。この教訓はわたしをよりよい科学者にしたと思います。」

 

Q:科学研究はあなたのセクシャル・アイデンティティーに影響を与えましたか?

 

A:「科学は確かに自分のセクシュアリティーをあるがままに受け入れる助けになりました。人々はよく、ゲイであることは「不自然だ」と言います。自然は男性が女性を、女性が男性を愛するようにできていて、ゲイの人間はその自然の法を破っているのだ、と。科学研究はそれがまったく無意味であると教えてくれました。「不自然な行動」なんてものはありません。存在するあらゆるものは、定義上「自然」なのです。」

 

A:「人々は自然の法を破ることができません。自然の法は交通法とは違います。交通法では、政府は一時間に100キロ以上走ってはいけないといい、それに対して人々は法を破って一時間に120キロ走り、交通警官が止めて違反チケットを切ります。自然の法は、あなたは光の速さより早く移動することはできないと言います。それは、もしあなたが光の二倍の速さで運転したとしたら、銀河系の交通警官があなたを止めて違反チケット切る、という意味ではありません。単にそれは無理なのです。もし光の速さ以上に早く移動することに成功したとしても、おそらくそれは、わたしたちが自然の法を理解していないという意味なのです。そしてある状況では光より早く動くというのは自然なことなのです。」

 

A:「定義上、自然なものが存在するとしたら、二人の女性が互いに愛しあうとしたら、それは自然だということです。どんな自然の法もそれを禁止しません。事実、同性愛は人間の世界だけではなく、多くの動物の世界でよくあることです。例えば、自然界でわたしたちに最も近い親戚であるチンパンジーに同性愛的行動はよく見られます。ほとんどのチンパンジーの性的活動は子どもを出産するためではありません。チンパンジーは親密関係を築き、緊張関係を緩和するため、政治的な同盟を築くために性行為を利用します。それは不自然でしょうか。出産の目的のためだけに性行為があるという考えは、司祭やラビが作りだしたまったく無意味なものです。」

 

A:「実際、わたしたちの自然・不自然のコンセプトは生物学によって使われているのではなく、キリスト教神学のために使われているのです。神学的意味の自然というのは、自然を創造した神の意図と一致します。キリスト教神学者たちは神が人間の身体を創造し、それぞれ人間の手足や器官はある一定の目的に使うために創造されたと論じます。もしわたしたちが神の思い描いた意図にそって手足や器官を使うとしたら、それは自然な行為になり、その意図に外れて使うとしたら不自然だということです。しかしそれらは全て神話にすぎません。神は人間や動物を創造していません。彼らは自然淘汰によって進化してきて、進化には目的がないのです。器官はある一定の目的によって進化してきたわけではありません。」

 

A:「動物や人間の器官の使い方は常に流動的です。人間の身体には、数億年前、最初に登場したときの原型となる仕事だけを行ういかなる器官もありません。たしかに器官はある一定の働きをするために進化してきましたが、いざ存在しはじめると、他の使用方法に適応することは全く自然なことなのです。」

 

A:「羽は古代の爬虫類を温めるために最初は登場しました。今それは鳥が飛ぶために使われています。それは自然なことでしょうか。指はわたしたちの祖先が木に登るために登場しました。今わたしたちはその指をピアノを弾くために使っています。それは自然なことでしょうか。口は器官が食べものを身体に吸収するために現れました。今わたしたちはしゃべるため、キスするために使っています。それは自然でしょうか。同じように、性行為ははじめ出産のために現れました。しかしいまわたしたちはそれを親密さ、友情、関係性を築くために使っています。それのどこに不自然な部分があるのでしょうか。」

 

Q:ヌードやオープンなセクシュアリティが示されるためにゲイパレードに反対する人たちに何か言うとしたら。

 

A:「そうですね。歴史を通してヌードはごくわずかな人間しか殺していませんが、宗教的な狂信主義は何百万人も殺しています。なので、ゲイパレードのヌードを心配しすぎる前に、宗教的過激論者を心配した方がいいでしょう。」

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 写真参考元:TedTalk