イスラエルいろいろ

イスラエルってどんなところ? ふだんだれがなにして暮らしてる? そんなギモンを掘り下げてみました。ユダヤ人の歴史・文化にも踏み込んでいきます。

夏木マリの曲をフィーチャーするイスラエルのシンガーソングライター、イヴリ・リデル

イスラエルの若者の空気感を表現する人気のアーティストがいます。彼の名はイヴリ・リデル (עברי לידר)。

 

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彼の曲はポップでキャッチー。

 

ビブラートを効かせないあっさりとした歌い方で、エレクトロサウンドを駆使し、現代の空気にあっている曲を発表し続けてきました。

 

そんな彼が日本語の曲をもろにフィーチャーした曲を発見。

 

それは2002年に出したアルバム『אננשים חדשים』(“アナシム・ハダシム”。直訳すると「新しい人々」)の2曲目の『בתי קפה』(“ブテイ・カフェ”「コーヒーハウス」)。

https://youtu.be/UYBBZB-X5kA

 

この曲、いくつになってもかっこいい日本人女性、夏木マリの「いちばん好きなのは煙草を喫うこと……」という日本語の語りから始まり、最後にはまた夏木マリの語りで終わります。

 

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この語りは1995年発売の夏木マリのミニ・アルバム『9月のマリー』に収められている『いちばん好きなもの』という曲中のセリフを一部とったもの。元ピチカート・ファイヴの小西康陽氏が手がけている曲です。

 

外国のアーティストが日本の要素をを取り入れると、概してステレオタイプな日本風を取り入れて日本人が聞くと白けてしまうのが常ですが、この昭和のノスタルジックな雰囲気を醸し出す夏木マリのセリフのチョイスは見事。

 

夏木マリのセリフにつづくイヴリ・リデルの歌詞では、イスラエルの新世代になんとなくただよう倦怠感、自分のアイデンティティーなんて真剣に探すわけでもなく、ただその場でその場を生きる若者たち、と言った世界観を表しています。

 

それが『いちばん好きなもの』で描かれるような昭和の確固とした自我を持つ女性、自分が何者かをちゃんと知っている女性と対照的です。

 

日本語を理解しないイスラエル人に歌詞の内容が伝わらないのが残念に思いますが、そこはさすが夏木マリ。声の存在感だけで魅せることができます。

 

ちなみにイヴリ・リデルは2001年に自分がゲイであることをカミングアウトしています。もう40代ですがルックスも良く、さまざまイスラエル音楽界の大物とコラボする彼は、まだまだイスラエル音楽界の中心で活躍することでしょう。(以下は歌詞。日本語は原文ママ。)


『בתי קפה』(“ブテイ・カフェ”)
(日本語)
いちばん好きなのは煙草を喫うこと
あなたがいつも喫った
ジプシーの絵の書いてある
両切りの美味しい煙草
昔の女優のように
くわえ煙草で 煙が目にしみて
そして私は涙を流す
べつに気にしない あなたが帰るまで


לפעמים נראה כאילו כל מה שאני עושה
זה לשבת בבתי קפה ולתכנן את העתיד שלנו
たまに自分がしていることといえば

カフェに座って自分たちの未来のことを計画してるだけって感じがする


לפעמים נראה כאילו כל מה שאני רוצה
לחכות שמשהו יקרה, שמישהו יזיז אותנו

ときおりだれかがぼくたちをの状況を変えてくれるのを待っていて

望んでいるのはそれだけって気がする

 
זה דור שלם של אנשים שלא אכפת להם כמעט מכלום
?עם מי לישון, מתי לקום ואיפה הזהות שלנו

だれと寝ていつ起きて

自分のアイデンティティーがどこにあるのかなんてまったく気にしない世代

 

זה שערות מפלסטיק או זה אמיתי

その髪ってプラスチックでできてるの?

それとも本物の髪?

 
תקשיבי די ג'יי זה לא שם פרטי

DJに耳を傾けてごらんよ

それは君の名前じゃない

 

 למרות שחצי תל אביב תסתובב כשתצעקי

君が叫べばテルアビブの半数の人が振り返るだろうけど

 

 (日本語)
煙が目にしみて
そして私は涙を流す
煙が目にしみて
べつに気にしない あなたが帰るまで
べつに気にしない あなたが帰るまで

 

 לפעמים נראה כאילו כל מה שאני עושה
זה לשבת בבתי קפה ולדבר על החיים שלנו
たまに自分がしていることといえば

カフェに座って自分たちの人生について話してるだけって気がする


תכניות שלום וטוק שואו וחצי מנחה

平和な番組にトークショーにやる気のない司会者

 

איך כסף זה דבר יפה כשהוא הולך איתנו

やつが抱えている金がどうして美しいなんて言えるんだ?


אז שמישהו יוציא לו את הבטריה מהגב

そしてだれかが彼の背中から電池を引っこ抜く


הוא רוצה הכל והוא חייב עכשיו

やつはすべてがほしくて今この時だけを必要としている

 
להשתנות, הוא לא יתן לזה לקרות
לא יתן לזה להיות

変わりたいって?

そういうわけにはいかないよ

そうはならないだろう

 

כי שנתיים של טיפול כבר לא עוזרות

だって二年間のカウンセリングも役立たなかったじゃないか


(日本語)
煙が目にしみて
そして私は涙を流す
煙が目にしみて
べつに気にしない あなたが帰るまで
べつに気にしない あなたが帰るまで

 

 לפעמים נראה כאילו כל מה שאני עושה
זה לשבת בבתי קפה ולשחק את התפקיד שלנו
たまに自分がしていることといえば

カフェに座ってそれぞれの役を演じてるだけって気がする

 
בחור רגיש שלא לוקח אחריות על מה שהוא עושה

自分のやっていることに責任をとらない繊細な男

 
איך אושר זה דבר יפה שיחלקו גם לנו

その幸せは美しいと言えるの?

だったらぼくたちにも分けてくれないか

 
זה דור שלם של אנשים שלא אכפת להם כמעט מכלום
עם מי לישון עם מי לקום ואיפה הילדות שלנו?

だれと寝ていつ起きて

子ども時代がどこに行ってしまったのかまったく気にしない世代

 
בתוך מחשב, בתוך אתר של כמה מופרעים
שכבר איבדו את הרצון שיהיו להם פנים

PCの中に

もう自分がだれなのか知る欲望を失ったやつらのウェブサイトの中に

 

(日本語)
いちばん好きなのは煙草を喫うこと
あなたがいつも喫った
ジプシーの絵の書いてある
両切りの美味しい煙草
昔の女優のように
くわえ煙草で 煙が目にしみて
そして私は涙を流す
べつに気にしない あなたが帰るまで