イスラエルいろいろ

イスラエルってどんなところ? ふだんだれがなにして暮らしてる? そんなギモンを掘り下げてみました。ユダヤ人の歴史・文化にも踏み込んでいきます。

『ファウダ ―報復の連鎖― 』シーズン2の公開に先立つイベントに行ってきた

イスラエル発、世界で人気のドラマ『ファウダ ―報復の連鎖―』。
 

イスラエルで製作されたドラマで過去最高との呼び声も高く、待ちに待ったシーズン2の放送が20181月からイスラエルで始まりました。

日本の視聴者向けとしては、シーズン1と同じくNetflixが5月末より配信を開始しました。

ファウダ -報復の連鎖- | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

 

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『ファウダ―報復の連鎖―』ってそもそもどんな内容?

 

アクションともサイコスリラーともジャンル付けされるこのドラマは、イスラエルとパレスチナ紛争を下敷きにしています。しかし平和をうったえる要素はゼロ。

 

どちら側にも正義があるようには描かれず、時に残酷なことも平然と行う。ただ両者とも同じように愛する家族がいて、大切な人が殺されたために復讐をする動機があるということが繰り返し描かれます。

 

シーズン1のあらすじは、イスラエルの特殊部隊が死んだと思っていたハマス(イスラエルに対して武力闘争路線を支持するパレスチナの組織)に所属していた伝説的なテロリスト、アブ・アフマドという人物を殺すために数々の作戦を決行していく、というもの。

 

イスラエル特殊部隊に対抗するパレスチナ側も作戦の裏をかいては報復に転じていきます。

 

ドンパチする場面も多いですが、一番の見どころは両者が出しぬきあう頭脳戦と心理戦、そこを通じて描かれる人間ドラマでしょう。

 

ドラマではヘブライ語とアラビア語が半々(むしろアラビア語のほうが多め)で話されます。

 

このドラマ、パレスチナ人にも人気がでてますます話題に。

 

 

そんなファウダ2の放送が20181月に始まり、それに先立つイベントに2017年の12月に行ってきました。

 

 

『ファウダ』の成功は予想外

 

ファウダのプロデューサーでジャーナリストでもあるアビ・イサハロフ氏とイスラエル・タイムズの記者の対談という形式で、エルサレムにあるカルチャーセンター「ベイト・アビ・ハイ」で行われました。

  

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始まる頃には会場は満員。

 

さっそく対談が始まります。

 

まず聞いて驚いたのは、ファウダの企画を売り込もうとした際にイスラエルのあらゆる放送局から断られた、ということ。

 

イスラエルとアラブ紛争ネタはもっとも退屈だから、というのがその理由。

 

結局拾ってくれたテレビ局はあったものの、売り込む当の本人もこんな成功にいたるとはまったく想像できなかったといいます。

 

 さらに印象的だったのは、エピソード1の最初の結婚式のシーンを撮影したときの話。

 

パレスチナ人の町で撮影することが決まっていたのですが、直前になってパレスチナとイスラエルが戦争状態に入ってしまいます。これでは撮影は断られるだろうと覚悟していたらしいですが、市長が大丈夫だから来るようにと言ってくれて、地元の人たちの全面的な協力のもと撮影が無事終えたとのこと。スタッフと俳優のモチベーションが上がったと話していました。

 

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またシーズン1でドラマ内一のイケメンであるボアズがイスラエル人の恋人といちゃいちゃしながらアラビア語の歌を口ずさむシーンがあります。

 

これはイサハロフ氏が実際に取材で刑務所に行きハマスのテロリストにあった際に、そのテロリストが口ずさんでいた歌だそうです。それを耳にしたイサハロフ氏はふと「目の前のテロリストとして捕まっているこの男は誰を恋しがっているのだろう?」 と感じ、この歌を取り入れたそうです。

 

 その後のエピソードではボアズの恋人が自爆テロで殺されます。自爆テロを実行したパレスチナ人女性はイスラエル特殊部隊によって結婚式当日に花婿を殺され、その復讐として自らテロリストに志願し、テルアビブのバーで自爆します。エピソード1で最も印象に残る話の1つです。

 

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「ファウダはあくまでフィクションである。その上でリアリティーの本質を描こうとしている」とイサハロフ氏は言います。

 

 

ハマスもHPにリンクを貼っていた

 

さらにイスラエルの占領地となっているパレスチナ自治区でのファウダの人気についても語ってくれました。

 

占領地であるヨルダン河西岸地区を、ドラマの中でハマスのメンバーという設定のワリッド役の俳優と歩いていたら、10人くらいの若いパレスチナ人が「ワリッドだ!」と興奮して追いかけて来たのだとか。

 

また刑務所にハマスのメンバーを訪ねていったときも、話している途中で彼がファウダの製作者だと知ると「ああ、君がファウダを書いた人ね」とあきらかにファウダを知っている様子がうかがえ、

 

さらにハマスのHPには「このドラマはシオニスト(パレスチナにユダヤ人の国を作ることを支持するユダヤ人たち)のプロパガンダであるので見てはいけない」と注意換気したあとにエピソード1が見れるリンクが貼られていたそうです。

 

 

ドラマの成功がパレスチナ・イスラエル紛争に希望をもたらすわけではない

 

イサハロフ氏はその他にも自身のジャーナリストとしての経験についても語ってくれました。

 

中でも印象的だったのは、ガザ地区のパレスチナ人兵士がイスラエル軍との長期戦に備えるためエクスタシーを摂取していることや、イスラエル軍に殺された男性の家に行き、奥さんにインタビューしている最中に携帯に連絡があり、「君を拉致する計画があるから今すぐそこを離れてくれ」とイスラエル側から言われすぐに立ち去ったことなどを語っていました。

 

 最後にインタビュアーから「ファウダの成功はパレスチナ•イスラエル紛争に希望をもたらすと思うか」との問いにはっきりと「ノー」と答えていました。

 

 ドラマの成功と紛争の現実を混同してはいけない、いうメッセージにも受け取れました。

 

しかしそういった裏話なしでも楽しめるファウダ。興味のある方はぜひ見てみてください。