イスラエルいろいろ

イスラエルってどんなところ? ふだんだれがなにして暮らしてる? そんなギモンを掘り下げてみました。ユダヤ人の歴史・文化にも踏み込んでいきます。

Netflix オリジナルドキュメンタリー 『ワン・オブ・アス』

普段イメージする都会的でおしゃれなニューヨークのブルックリンという場所にこんな世界があったのか……と驚いてしまうドキュメンタリーのご紹介です。

 

2017年10月にリリースされたNetflix オリジナルドキュメンタリー 『ワン・オブ・アス』(『One of Us』*日本語字幕版もあり)。

One of Us | Netflix Official Site

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舞台はニューヨークのブルックリン。

 

ユダヤ人の中でもユダヤ教独自のルールを特に厳格に守って、閉鎖的な共同体を作っているハシディズムと言われる超正統派のコミュニティーが暮らしています(イスラエル国内にも存在します)。

 

男の人たちは夏でも黒ずくめの格好をし、安息日にはふわふわしたバームクーヘン型の黒い帽子をかぶります。女の人たちは肌を見せないよう長袖のシャツを着てロングスカートをはいています。

 

ハシディズムはとにかく生活上のルールが多い。

 

映像に出てくるブルックリンの街中に「肌色のストッキングは着用禁止」と書いてあるのにはびっくり。ファッションと恋愛に没頭するあの『セックス・アンド・ザシティー』と同じニューヨーク? と思ってしまいます。

 

言葉もイディッシュ語というドイツ語とヘブライ語のミックスのような独特な言葉を話すので、まわりの人たちが簡単に入っていける世界ではありません。

 

 

ドキュメンタリーでは、共同体の暮らしに違和感を感じ、もがくハシディズムの人たちの姿を追っています。

 

登場人物の一人の女性は、長年夫に虐待を受けながら、27才まで7人(!)の子供を産み、ハシディズムを抜けようとする人たちのためのグループミーティングに通っています。それを良く思わない人たちから監視や尾行をされたり嫌がらせを受けたりし、あげくのはてには夫に親権を取られ、7人の子供たちと離れることになります。

 

ちなみにハシディズムを去る人たちは全体の約2%。ものすごいまれなことです。

 

ある19才の青年はふと鏡の前の自分が自分ではないと気づき、床屋でハシディズムの男性に特徴的な巻き毛のもみあげをカットし、敬遠すべきインターネットの魅力を発見します。青年はコカインに手を出して治療施設に行きますが、カメラの前で8才のときに同じハレディの男性にレイプされたことを打ち明けます。

 

どちらのケースにしても加害者は裁かれない。共同体は絶対で、独自の法制度を持っているからです。裏を返せば、共同体を第一に考えて行動していれば、守られた環境の中で生きていけます。

 

だけど、その暮らしに疑問を感じはじめるとそうはいかない。


苦しむのはコミュニティーに違和感を感じて距離を置こうとする人たちです。

 

しかも、コミュニティーから出たとして、独自の宗教教育を受けて来た彼女たちには、外の社会で戦っていくだけのノウハウがまったくないのです(例えば算数を学ばないなど)。

 

ドキュメンタリーではそんなコミュニティーへの葛藤が描かれています。

 

ユダヤ人の話ということをさし置いても、かつて所属していた共同体から抜け出ようとした経験のある人ならば、どこかピンとくる内容かもしれません。